第52回.オブジェクト変数とSetステートメント
変数のデータ型の説明において、
Object ・・・ オブジェクト型
というのがあった事を覚えているでしょうか。
オブジェクトと言っても、いろいろなものがあります。
ブックもシートもセルも、これらは全てオブジェクトです。
これらを入れることができる変数がオブシェクト変数になります。
単なる=の代入ではなく、Setステートメントを使った=代入を使用します。
オブジェクト変数
総称オブジェクト型とも言います。
Worksheet
Range
Worksheetオブジェクト
Rangeオブジェクト
その他にも、
Font
これは、Fontオブジェクトのデータ型になります。
このようにオブジェクト型は沢山ありますが、良く使うものはそんなに多くありません。
とりあえず最低限として、Workbook、Worksheet、Range、この3つだけは覚えておいてください。
Objectは、オブジェクトなら何でも入る
個別のオブジェクト型は、そのオブジェクトのみ
型指定が難しければObjectでも、まあ、Variantでも良いと思います。
ただし、
上記の3つ(Workbook、Worksheet、Range)これくらいは、正しく指定するようにして下さい。
個有のオブジェクト型とは
Microsoftのサイトでは、
「固有のデータ型を使用してオブジェクト変数を宣言」
このような文章がほとんどです。
しかし、一般的な呼び方として定着しているので、ここでも使用しています。
これはまだ知る必要が無いでしょう、おいおい説明していきます。
Setステートメント
オブジェクトへの参照を変数に代入します。
この参照を変数に代入というのが解りづらいでしょう。
オブジェクトは単なる値ではなく、プロパティやメソッドを複数含んだ集合体になります。
オブジェクトの実態を変数に入れていたのでは大変です。
そこで、オブジェクトのある場所(アドレス)を変数に入れておくという事です。
アドレスの入った変数を見ればオブジェクトのある場所が分かり、
結果としてオブジェクトにアクセスできるという仕組みです。
「こう書けばこう動く」
まずは、そのまま覚えてしまいましょう。
Setステートメントの使用例
Dim ws As Worksheet
Set ws = Worksheets("シート名")
ws.Cells(1, 1) =
1
これは、
Worksheets("シート名").Cells(1, 1) = 1
これと同じ事になります。
つまり、
Set ws = Worksheets("シート名")
これ以降は、
Worksheets("シート名")の別名として、wsという名称を使えると考えてもらって結構です。
上記では、1行で済むものを3行で書いているので、かえって面倒な感じもしてしまいますが、
wsはその後何回でも使えますので、結果として記述は楽になります。
Worksheets("シート名").Range("A1").Font.Bold = True
Worksheets("シート名").Range("A1").Font.Color = vbRed
Worksheets("シート名").Range("A1").Font.Size = 12
これは、
Dim MyRange as Range
Set MyRange = Worksheets("シート名").Range("A1")
MyRange.Font.Bold = True
MyRange.Font.Color = vbRed
MyRange.Font.Size =
12
このように書き直す事が出来ます。
WithとSetの使い分け方
どちらも、記述の簡略化になります、
そして、なにより、処理速度も速くなるのです。
ワークシートは、プロシージャーの先頭でオブジェクト変数に入れてから使う事をお勧めします。
さらに、Withと組み合わせることで、可読性・保守性の高いマクロVBAにすることができます。
SetとWithのどちらを使ったほうが良いかというような基準も決まりもありません。
WithはEnd Withの間でのみ有効なものであり、
Setで代入したオブジェクト変数は、変数の有効範囲そのものになります。
具体的には、以下のような使い方が良いでしょう。
Setステートメントの実践的な使い方
Dim ws1 As Worksheet, ws2 As Worksheet, ws3 As Worksheet
Set ws1 =
Worksheets("Sheet1")
Set ws2 = Worksheets("Sheet2")
Set ws3 = Worksheets("Sheet3")
With ws1
.Cells(1, 1) = ws2.Cells(1, 1)
・・・
.Cells(1, 2) = ws3.Cells(1, 1)
・・・
End With
上記の考え方は、
扱うワークシートは、とりあえず全てオブジェクト変数に入れる。
主なワークシートは、Withにする。
この辺の使い方は、人により個性が出るところではありますが、
このような使い方を念頭に置いておけば、マクロVBAがとても書きやすくなるはずです。
Is演算子によるオブジェクトの比較
それ以外はFalseになります。
オブジェクト変数(As Object または、As 固有オブジェクト型)の初期値はNothingです。
Dim 変数A As Worksheet
Debug.Print 変数A Is Nothing '→ True
Set 変数A = Worksheets(1)
Dim 変数B As Worksheet
Set 変数B = 変数A
Dim 変数C As Worksheet
Set 変数C = Worksheets(1)
Debug.Print 変数A Is 変数B '→ True
Debug.Print 変数A Is 変数C '→ True
Set 変数C = Worksheets(2)
Debug.Print 変数A Is 変数C '→ False
Rangeブジェクトの場合は注意が必要です。
Dim 変数A As Range
Set 変数A = Range("A1")
Dim 変数B As Range
Set 変数B = 変数A
Dim 変数C As Range
Set 変数C = Range("A1")
Debug.Print 変数A Is 変数B '→ True
Debug.Print 変数A Is 変数C '→ False
Rangeオブジェクトでは、上記VBAの最後がFalse判定になる点に注意してください。
したがって、同じセルを参照しているかの判定には、
.Address(External:=True)
この値(文字列)を比較するようにしてください。
最後に
マクロVBAの記述が書きやすく、そして読みやすくなります。
Worksheets("シート名")
この記述は、プロシージャー内では、何度も同じ事を書かないようにします。
シート名が変更になった時には、変更がとても大変ですから。
前回のWithステートメントと合わせて、しかっりと使えるようになってください。
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